北村さんちの遺跡めぐり

小松市    小松市の地図g

小松市八日市地方遺跡
ヨウカイチジカタイセキ

小松市土居原町・日の出町
撮影日2016/8/20
2017/12/9

大発見が幾つもある、小松市の代表的な遺跡。


 八日市地方遺跡は、平成5〜12年度の小松駅東土地区画整理に伴う大規模な発掘調査で、弥生時代中期の環濠集落の存在が明らかになった。
 標高1.5mの微高地に立地し、日本海へと通じる河道の両岸に何重もの環濠に囲まれた居住域は、多数の建物跡や井戸、木工・玉作り等のものづくりの痕跡等で構成され、その外側には方形周溝墓を中心とする墓域が展開していた。
 存続期間は紀元前約350〜50年のおよそ300年間で、小松式土器が成立する最盛期には、新潟にまで及ぶ小松文化圏を形成した。
   八日市地方遺跡 全体図
 出土品は数十万点にも及ぶ膨大な量で、広範な地域間交流を示す各地の土器や、ヒスイ製勾玉や碧玉製管玉の製作工程品、農工具や容器類等の未成品を含む木製品、豊かな精神文化に彩られた多様な祭祀具等、重要な発見が相次ぎ、平成23年度に、出土品1020点が国重要文化財に指定された。
 近年では、柄付鉄製ヤリガンナが出土している。

重要文化財に指定された出土品

精巧な碧玉製管玉の製作工程品

造形豊かな木製のすくい具や容器

柄付き鉄製ヤリガンナ

    (2022年7月「石製指輪出土」の現説資料から)

弥生最古の石製指輪出土
2022年 八日市地方遺跡
発掘調査現地説明会に参加して

撮影日2022/7/10

2022年7月9日、北陸中日新聞に
「小松・八日市地方遺跡から出土 弥生最古の石製指輪」という記事が掲載された。



発掘調査現地説明会が、7月10日に行われると知り、暑い中出かけた。

小松市の地図g

新幹線敷設工事に先立つ発掘調査は終わり、小松駅周辺の新幹線は完成している。
今回は、新幹線の東側の駅東地区複合ビルの建設に伴う発掘調査で、6月21日に、石製指輪が出土した。


(現地展示から)
2200〜2300年前ののもので、
国内でこれまで発見された中で
最も古いとみられている。
緑色凝灰岩製指輪
外径23.2mm
内径16mm
幅2.5〜3mm
断面形状は多角形
石材は玉作にも使われている地元産のもの

      イメージ
     (現説資料から)
 

淡緑色の指輪は半分欠損しているが、きれいな環状に仕上げられている。
指輪の号数でいうと10号に相当する。
一か所に直径1mmの孔があけられていて、破損した後に
 ペンダントとして再利用したか、指輪として補修して大切に使用されたと考えられている。
弥生時代の指輪の事例としては、これまでに全国で11例確認されている。
  愛媛県3、石川県1、新潟県1、長野県6

説明を聞いてから、遺跡内に立ち入って見学させていただいた。


指輪出土地点

土器出土状態
土器の年代から、その地層の年代を予測する


  八日市地方遺跡全体図 (現地説明板から)



今回の発掘調査区
(現説資料から)

八日市地方遺跡の中央を流れる旧河道の
左岸居住域を半円形に取りまく多重環濠の全体像が
ほぼ明らかとなった。


中央近くのが、指輪出土地点


   


発掘現場
手前は平地式建物跡

奥の環濠あたりで指輪が出土した。

発掘現場
左奥から右手前は環濠跡
環濠の向こうは墓域
   
      今回の出土品   (現地展示から)

   

 墓域では墓壙も発見された。

方形周溝墓

方形周溝墓の墓壙
木棺の痕跡が確認できる

   

「柄付き鉄製ヤリガンナ」の発見

撮影日2016/3/6

「柄付き鉄製ヤリガンナ」については、2017年7月28日に新聞に掲載された。

・・・国内最古の鉄製ヤリガンナ出土・・・  (北陸中日新聞から抜粋)
 石川県埋蔵文化財センターは、
  小松市八日市地方遺跡で、約2300年前の「柄付き鉄製ヤリガンナ」が出土したと発表した。



製作工程の図が、
北陸中日新聞に掲載されていたので、
そのまま紹介する。



 ほぼ完全な状態で、木製の柄がしっかりと残った鉄製ヤリガンナとしては国内最古となる。
 時期は日本列島で鉄器の生産が始まる100年以上前。
 当時、鉄は大陸からもたらされており、
   管玉や勾玉などの一大生産地だった八日市地方の人たちが
      九州や山陰との交易で入手したと考えられる。
 弥生時代に鉄器が各地に普及する過程の研究に役立つ可能性がある。
 八日市地方で大量に出土している木製の器の仕上げなどに使用していたとみられる。
 柄の下部には、精巧な斜めの格子文様が彫り込まれていることから、
    別の同様のヤリガンナが使われた可能性もあり、今後さらに調査する。
 2017/11/23、小松市埋文講座「小松を縦に掘る」でも紹介される。
 2017/12/9、石川県埋蔵文化財センターでの展示を見る。
 石川県埋蔵文化財センターでの展示の様子    (撮影日2017/12/9)


柄付き鉄製ヤリガンナ


2017/12/9
 県埋蔵文化財センターに行ったところ、
展示されていた。



 ヤリガンナ  原産地 中国北部〜朝鮮半島北西部  
 素材
 寸法 長さ 5.1cm
1.9cm
厚さ 0.2cm
 刃先 三角形両刃
 柄  原産地 八日市地方遺跡(石川県小松市)
 素材 イヌガヤもしくはカヤ
 寸法 長さ 13.9cm
1.9〜1.5cm
3.5cm
 接続方法  挟み込み式 @ 糸によりヤリガンナを固定
A 桜の樹皮テープにより組み合わせ部分を固定
 寸法 桜樹皮部長さ 7.3cm
 オプション  装飾 グリップ部に隆帯を削り出し、斜格子文を削り込む
        (石川県埋蔵文化財センター展示から)

 

 2016年の
小松市八日市地方遺跡
撮影日2016/8/20

2016年7月10日に八日市地方遺跡の現地説明会が行われたが、行きそびれたので、
    石川県埋蔵文化財センターに現地説明会資料を貰いに行ってきた。

現地にも見学に行こうと思っていたところ、
2016年8月16日付の北陸中日新聞に「小松駅の八日市地方遺跡 発掘調査を公開」という記事が掲載された。

 古代ロマンちらり  「小松駅の八日市地方遺跡 発掘調査を公開」

 発掘調査が行われているJR小松駅東口の八日市地方遺跡に、
   調査を見ることができる透明のアクリル板付きフェンスが設置され、駅利用客の注目を集めている。
 お盆シーズンには、古代ロマンに見入る多くの帰省客や観光客の姿が見られた。

 フェンスは高さ2mで、中央をくりぬき透明のアクリル板がはめ込まれているほか、
    一部のフェンスは全面透明になっており、駅とロータリーをつなぐ通路から発掘現場を見下ろすことができる。
 総延長は約40mで、7月下旬に設置された。通路には遺跡の歴史を解説するパネルも置かれている。
 調査は北陸新幹線の延伸に伴う高架橋工事を前に行われている。

 遺跡から出土した碧玉製の装飾品「管玉」に代表される小松市の石文化の発信を狙い、
  小松市が工事主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構に透明なアクリル板の設置を依頼した。
 調査は来年2月中旬までを予定している。          (北陸中日新聞から抜粋)

 

 八日市地方遺跡について
  小松市土居原町及び日の出町地内(現在のJR小松駅東側一帯)に所在し、
      推定面積15万uを超える北陸地域を代表する弥生時代中期の大規模な環濠集落。



調査の位置



 八日市地方遺跡  遺構概略図  (現説資料から)

 過去の発掘調査
  八日市地方遺跡は戦前から知られていて、これまで多くの発掘・試掘調査が行われてきたが、
  平成5年(1993)度から12(2000)年度の発掘調査では
     平地建物、掘立柱建物、井戸などで構成された居住域、
     居住域に隣接して築かれた方形周溝墓を主体とする墓域、
     居住域を取り囲むように掘られた多重の環濠が確認されて、
    数十万点の出土品が見つかり、そのうち1020点が国の重要文化財に指定された。
  平成27年(2015)度から、北陸新幹線に係る発掘調査を開始。
  27年度はB区の発掘調査
 弥生時代中期の大規模環濠集落として著名な八日市地方遺跡だが、
   A区・B区では室町時代14世紀)の井戸5基や区画溝などが見つかっている

 全ての井戸では、湧水による壁面の崩壊を防ぐため、水溜に曲げ物を設置している。
 大規模な削平を受ける前は井戸の周辺に掘立柱建物などの施設が存在していたと推測されている。

 

 B区 平成27年度の調査区の公開

新聞記事となった
    小松駅東口の発掘現場・B区



28年度の現説はここではなくて、
   この北隣りのA区。


アクリル板の向こうは発掘現場

発掘調査の様子

この北側に、28年度調査区の「A区」がある。

 A区 平成28年度の調査区
 遺跡の北西端にあたる。
 近世以降の構造物などで一部損壊していたが、ほぼ全面に弥生時代中期の墓域がひろがることが確認された。

 墓域は15基程度の方形周溝墓を主体としており、
    埋積浅谷(旧河道)の右岸域に大規模な墓域の存在することが明らかとなった。
 検出された方形周溝墓は、
     墳丘長辺が4m程度の小型墓から15mを超える大型墓まで、さまざまな規模のものが見られる。

 これらの方形周溝墓は、A区南半部に密集していて、
   周溝を重複させ連接的に築かれた(例えばZS4・7・8やSZ1〜5)ものが多く確認されている
 SZ6と名付けた方形周溝墓は、墳丘の長辺が15mを超える規模で、八日市地方遺跡のなかで最大の周溝墓となる。

A区全景

A区南端の方形周溝墓

このページを作っているときに、また八日市地方遺跡の記事が北陸中日新聞に掲載された。

 「北と西 2種の石斧と判明」 
 それぞれ国内遺跡の最南端、最東端を更新する発見になる。
 石斧は「三面石斧」と「層灰岩製片刃石斧」で弥生時代前期から中期にかけての地層で見つかった。
 三面石斧は、これまで北海道や東北北部の遺跡でしかみつかっておらず、秋田市の地蔵田遺跡での発見が最南端だった。
 層灰岩製片刃石斧は、九州北部を中心に見つかっていて、これまで鳥取市の松原田中遺跡での発見が最東端だった。
           (2016年10月20日の北陸中日新聞から抜粋)

小松市の石文化は、2016年、日本遺産に認定されていて、力が入っている。
(詳しくは「こまつ 珠玉と歩む物語」というHPをご覧ください。)

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